「日本人の車離れ」は、今や深刻なレベルに達した問題となっています。

それは、単に車が売れないと言った問題だけではなく、車に対する人々の関心そのものが薄れてきてしまっているようなのです。

その一方で、自動車は依然として、日本経済の中核を担う産業であり、裾野の企業や取引先などを含めると、国内の就業人口は1千万人近くにも達すると言われており、なんとも皮肉なものです。

車はいまや、人々の重要な生活道具であると同時に、国家的「家業」にもなっているのに、人々は興味を持たなくなっている…これは、日本国全体の危機と言っても過言ではないでしょう。

では、どうしてこのような状況になってしまったのでしょうか。

そもそも、自動車には、個人の移動手段という機能以外に、2つの重要な文化的側面も持ち合わせてきました。

1つは、運転という行為そのものが持つ創造性、もう1つは、住まいや衣料などとともに、人々にとって、ライフスタイルの表現手段になりうる面です。

「いい車」には、そう言った文化的側面においても、豊かな資質を備えていなければなりませんでした。そして優れた車は、運転という行為を通じて、乗り手を良識のある大人に育てあげ、より行動的にも、創造的にも変えていく。

それが自動車というものの奥行きであり、また、尽きない魅力でもありました。

しかし、日本では機能にばかり目がいって、文化的側面にまで関心が向かなか
ったように思えてなりません。

そもそも、税金、保険料に加えて駐車料金、通行料などが馬鹿げて高い日本の大都市圏では、車を所有することが、経済的にも見合ません。

そういう環境で生まれ育って、満員電車で通学、通勤することに慣れてしまった都会の若者たちが、クルマに関心を持たないのは、むしろ当然のことではないでしょうか。